日本の文化と作法を学ぶ
古くから寺社は文化や芸術を育てる場として大きな役割を担っていました。戦国期から江戸期にかけ、寺社は経済的基盤を築く傍らで芸術家を支援し、美術品を収蔵しました。また寺社の多くでは、日本の文化と作法を体験し、学ぶことができます。坐禅を組んで禅の思想に触れたり、精進料理から日本の食文化と礼儀作法の源流を学んだり、寺社は日本の歴史に触れながら新しい価値観を見つける機縁に満ちています。人と出会い、教えを受けることで、知的な発見があるかもしれません。つぎに寺社で体験できる文化や作法の一部をご紹介いたします。
瞑想
瞑想の基本は姿勢を正し、呼吸を整え、気持ちを穏やかにすること。瞑想は自身を煩悩や欲望から解き放つための修行法とされてきました。臨済宗や曹洞宗などの禅寺で行われる坐禅、真言宗系寺院で行われる阿字観(あじかん)が瞑想法の一種としてよく知られています。瞑想はストレスの解消や集中力の向上に寄与すると言われています。
精進料理
仏教の戒律に「不殺生戒(ふせっしょうかい)」(生きものを殺さないという戒め)があり、精進料理では肉類や魚介類を使用せず、穀物、野菜、豆製品などの植物性の食材だけで料理します。食材を生かし、むだを出さない調理法から、すべての生命の尊さと食に対する感謝の気持ちを学びます。
写経
印刷技術もなく紙も貴重だった時代、写経は大切な経典を写しとる僧侶の修行でした。のちに、祈願や供養のための写経が一般にも浸透していきます。現代では一般的に『般若心経』の二六二文字を写経します。一文字、一文字、心を込めて丁寧に書写することによって、雑念を忘れ、静かに心落ち着く時間に包まれます。
法話
法話とは、住職や僧侶による仏の教えや信仰のあり方にまつわる講話のこと。仏典に沿った話が土台となりますが、喩え話やユーモアを交える場合もあり、話者によって内容や雰囲気は多種多様です。朝のお勤めの後、法話の機会を設けている寺院もあります。
修行
主に仏教や修験道で励行されるもので、上述の瞑想なども修行の一つです。密教における祈祷で、本尊の前で護摩木を炊きながら真言(しんごん)を唱え、仏に祈りを捧げる護摩行(ごまぎょう)。滝の冷水に打たれて身を清める滝行や僧衣を身につけ作法を学ぶ僧・尼僧体験。二泊以上寺院に参籠する断食など、多種多様な修行があります。
鑑賞
多くの寺院や神社は宝物を所蔵しています。寺社建築そのものが重要文化財や国宝、時に世界遺産として指定されている場合もあります。時代や宗派によって異なる仏像や庭園の違いを知るのも鑑賞の醍醐味と言えるでしょう。宿坊の宿泊客だけが拝観を許されている障壁画や屏風などの美術工芸品をもつ宿坊もあります。