はじめての宿坊

〜醍醐味と泊まり方〜

しゅくぼう 宿坊

静謐な時間の中で、

自分と向き合う心の旅。

ここでは、初めて宿坊に

泊まる旅をされる方に、

その醍醐味や過ごし方を

ご案内します。

About 宿坊とは

仏教寺院や神社の境内に設けられた宿泊施設「宿坊」。

宿坊は、かつて僧侶や神主が寝泊まりするための場所でしたが、平安のむかし寺社参詣の普及により、参詣する人びとが神様仏様のもとで一夜を明かし、心身を清める場所へと発展しました。
江戸時代になると、各地の大寺社で宿坊が整備され、参拝者だけでなく一般観光客も受け入れるようになっていきます。
そして現代、さらに設備やサービスも整えられ、多くの宿坊は誰でも気軽に泊まれる宿へと進化を遂げました。

では、一般的なホテルや旅館と宿坊は何が違うのでしょうか?

Enjoy 宿坊に泊まる
醍醐味

一般的な宿泊施設と宿坊の違いであり、宿坊に泊まる醍醐味といえば、なんといっても修行やお勤めに参加できるところでしょう。 仏教や神道の勤行は、日本人の精神の基本。古より綿々と伝えられてきた教えも、現代人にとっては今や“非日常”です。 しかし、たとえ一日という短い時間であっても、その非日常の暮らしに身を置くことで、「日本の心」を改めて深く理解するきっかけとなるに違いありません。 忙しない日常から離れ、自分自身と静かに向き合うことのできる貴重なひとときとなることでしょう。

体験できる修行例

  • 瞑想

    瞑想 meisou

    瞑想の基本は姿勢を正し、呼吸を整えて気持ちを穏やかにすること。

  • 坐禅

    坐禅 zazen

    姿勢、呼吸、心を整えて自我を取り除くこと。一回の坐禅は「一炷」で行う。

  • 読経

    読経 dokkyo

    仏の教えが記された「経典」の意味を理解するために、仏前で経を読み上げます。

  • 写経

    写経 syakyo

    現代では一般的に「般若心経」の二六二文字を写経します。

  • 写仏

    写仏 syabutu

    下図を基にして、仏画を描き写すことを行として行います。

  • 護摩行

    護摩行 gomagyo

    本尊の前で護摩木を炊きながら真言(しんごん)を唱え、仏に祈りを捧げます。

  • 滝行

    滝行 takigyo

    主に仏教や修験道で励行されるもので、滝の冷水に打たれて身を清めます。

  • 精進料理

    精進料理 shojin ryori

    すべての生命の尊さと食に対する感謝し、精進料理では肉類や魚介類を使用しません。

  • 法話

    法話 houwa

    法話とは、住職や僧侶による仏の教えや信仰のあり方にまつわる講話のこと。

文化芸術を間近にあじわう

宿坊に泊まることで、通常は拝観できないような重要な文化財を見せていただくといった貴重な機会に恵まれることもあります。また、寺社では建物や庭園はもちろん、ふすまの引き手ひとつとっても歴史ある美術品。そんな文化芸術の中で寝食するという稀有な体験ができるのも宿坊ならではです。

自然や気に癒される

神社や仏閣の多くは市街地から離れた自然豊かな場所や、「気」の良い場所に建てられており、そこで一日過ごすだけでも知らず知らずのうちに癒され、清々しい気持ちになります。美しい日本庭園を散策し、四季を堪能しながら、普段とは異なる時間の流れを感じてみてください。

Schedule 宿坊で過ごす一日

では、実際に宿坊で過ごす一日がどのようなものなのか、
ある寺院の宿坊体験を例に見てみましょう。

一日目 PM3:00

宿坊に到着・チェックイン

山門をくぐり境内へ。玄関でお坊さんが出迎えてくれました。
受付を終え、まずは施設の説明を受けます。

PM4:00

坐禅体験

いよいよ最初の修行体験です。鐘の音と共に坐禅を開始。心を無にし、自分自身と向き合う30分。足が痺れ、身動きできない時間はつらく長いものに感じます。でも、終盤は集中することができ、終えたあとは清々しい気分に。
夕食の時間まで院内を散策させていただきました。

PM6:00~

夕食

夕食は決められている時間にとります。修行僧の方がお給仕してくださる精進料理をおいしくいただきました。お椀の持ち方や扱い方などを教えていただき丁寧に食事をしていると、食事に有難みを感じます。

PM7:30~

入浴・就寝準備

宿坊の朝は早いので、翌朝に備えて早めに就寝準備をはじめます。こちらの宿坊は入浴時間がPM4〜9時までと決められていました。

PM9:00

消灯

消灯時間も普段より早いです。早起きのためにも夜更かしは禁物。

二日目 AM6:00

朝のお勤め(読経体験)

勤行をはじめる定刻の5分前に鐘の音が響き渡ります。参加は自由ですが、せっかく宿坊に泊まったので体験してみることに。住職が唱えるお経に合わせ、経文を見ながら読経しました。

AM7:00

朝食

いつもより早起きをし、お勤めを終えたあとの朝食は格別においしく感じます。

AM8:00

写経体験

般若心経262文字を筆で写します。一文字一文字丁寧に書く作業はとても集中できて、あっという間に時間が過ぎました。

AM10:00

チェックアウト

帰り支度を整え玄関へ。これで宿坊の一日は終了です。お見送りしてくださったお坊さんに心を込めて合掌。周辺の観光スポットなどの情報も教えていただきました。

  • ※宿坊によって、食事の有無、修行体験の内容や時間は異なりますので予め各宿坊へご確認ください。
  • ※修行体験には予約や参加費が必要な場合があります。
Select point

宿坊選びの3つのポイント

ホテルや旅館とは設備もルールも異なる宿坊。
目的やできる体験をしっかり確認をしながら行き先を選びましょう。

Point01体験したい修行や
行事を決める

修行体験は宿坊宿泊の醍醐味。宗派によって修行の内容や行う時間も異なるので、瞑想や坐禅、読経や写経など、体験してみたい勤行を決めてから宿坊を選ぶと良いでしょう。行事参加に別料金がかかる場合もあります。朝の勤行や各種体験・作務の有無については、時間や料金も含めて宿坊に直接確認をしておきましょう。

Point02食事の有無や
内容を確認する

山奥など近くに飲食店が無い場所にある宿坊では夕食と朝食の二食付きのところも多いですが、町中にある宿坊では朝食のみや素泊まりの場合もあります。夕食が精進料理と懐石料理から選べたり、精進料理づくりを体験できる宿坊もあるので、値段と共に事前に確認しておくと良いです。

Point03建物の種類を
確認する

同じ宿坊でも、古めかしい建物の場合もあれば、敷地内併設のコンクリート造の建物の場合もあります。風情を選ぶなら前者ですが、修行体験など宿坊ならではの体験はしたいものの、宿泊は近代的な施設が良いという方は後者の方を選ぶと良いでしょう。

Enjoy point

宿坊を楽しむ心得

はじめての宿坊を楽しむために、見落としがちなポイントやよくいただくご質問をまとめました。
これらの項目をチェックしておきましょう。

交通手段を
調べておこう

宿坊は山中など交通の便の良くない場所にあることが少なくありません。事前に電車やバスなどの時刻表や行き方を調べておくことをお勧めします。

洗面用具などは
持参しよう

アメニティーグッズが備わっていてる宿坊もありますが、基本的には置いていない場合が多いです。シャンプー・コンディショナー・ドライヤー・歯磨きセット・タオル・寝巻きなどは準備し持参してください。できるだけ荷物を少なくしたいという方は、前もって宿坊に備品の有無を確認しましょう。

礼儀・決まりを
守ろう

普通の宿泊施設に見えても、宿坊は宗教施設です。仏事や神事に対する敬意や、そこに暮らす僧侶や神職の方への礼儀を忘れないようにしましょう。また、食事やお風呂の時間、消灯時間が決められている場合があります。宿坊が定めた規則にきちんと従ってください。

早寝早起きを
しよう

宿坊の朝は早いです。普段ならまだ残業していたりテレビを見ていたりする時間でも、夜は早めに床につきましょう。宿坊ではお隣とふすまを隔てているだけの場合があります。他の宿泊者の迷惑にならないよう夜は静かに過ごしてください。

宿泊可能人数を
確認しよう

宿泊は複数人数からという宿坊や、許容人数の少ない宿坊もあります。一人旅を希望する場合や、家族や友人など大人数での宿泊を希望する場合は、予めその人数で宿泊が可能か確認しておくと良いでしょう。

寒暖差に気を
つけよう

山の上など標高の高い所にある宿坊は朝晩冷え込みます。また、冷暖房設備があまり整っていない宿坊もありますので、寒暖差を考慮し防寒着やカイロなどのグッズを用意しておくと良いですね。