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湯治女子シヅカの 「1weekノマド式ひとり湯治旅」~東北編~<青森・岩手編>

2017年8月2日

湯治女子シヅカの「1weekノマド式ひとり湯治旅」~東北編~<序章>でご紹介した通り、仕事をひと段落終えた私は、7日間に及ぶ湯治旅に出ました。前半1日目~4日目の青森・岩手編の旅のはじまりはじまり。

目次

  • ・1日目~2日目 青森 酸ケ湯温泉で2泊
  • ・3日目 青森 不老ふ死温泉で1泊
  • ・4日目 岩手 鉛温泉藤三旅館で1泊

1日目~2日目 青森 酸ケ湯温泉で2泊


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酸ヶ湯温泉

青森の冬は早い。12月中旬からは豪雪の地域が増え、道路が凍結するためクローズとなり辿り着けないお宿もあるのです。お宿自体もクローズしてしまいます。そんな中でもぎりぎりまで営業をしていたり、除雪をしてくださったりしてなんとかオープンしているお宿もあります。

そのひとつが、青森県の豪雪地帯・八甲田山にある酸ヶ湯温泉です。昭和29年に設定された国民保養温泉地第1号に、群馬県四万温泉と共に選ばれたのがここ酸ヶ湯です。湯の泉質はもちろん、周辺の自然環境や宿も認められている証拠だと、そのクオリティにわくわくしました。

酸ヶ湯温泉では、宿泊客に限り、年中運行している青森駅からの無料送迎バスを利用することができます。およそ1時間半程度で酸ヶ湯温泉に到着しますが、八甲田山へと向かう道中は、晴れたり曇ったり吹雪いたり霧がかったりとくるくる天候が変わっていくのも楽しめました。激務に疲れてひとっとび青森へ来た、それをじわじわと実感するのもこの移動の時間でした。

到着すると、大浴場ヒバ千人風呂・熱湯・四分六分・滝湯等、様々な温泉環境が用意され、旅行に来ているお客様も当然いらっしゃるのですが、昔ながらの湯治を楽しむおじいちゃん・おばあちゃんも多くいらっしゃり、長年親しまれてきた歴史ある宿の中で、いきなりタイムスリップしたかのような気持ちに。キッチンを備えた湯治部も健在で、通常旅館部と湯治部であれば前者がより高額でお部屋もいいのですが、酸ヶ湯温泉で特筆すべきことが、これが逆転していることでした。なんと湯治部の方が現在リノベーションされており、旅館部からわざわざ「転部」されたり、見学に来られたりするお客様もいらっしゃいました。私は迷わず、湯治部を選んでいたので、少し鼻が高かったです。遠くから湯治に来られていたおばあちゃんと炊事場で、湯が沸騰するまでお喋りしたり、売店で買ったミルクを温めている間にまた別のおばあちゃんとお喋りしたり…まるで世代を超えた合宿のような、ソーシャルアパートメントのような、そんな時間を過ごしました。

そしてこのリノベーションされた湯治部の横には、コミュニティスペースがあり、ここでゆったりと読書をしたり、売店で買ったコーヒーを自分で淹れたりして過ごすことができます。私が訪れた2日間は猛吹雪で外出も出来なかったので、宿の中で日がな読書と温泉を楽しみました。コミュニティスペースにいる金魚を眺めたり、そばで読書していたりしているうちに、金魚たちは私が行くと近寄ってきてくれ、知り合いになった気持ちでした(笑)。そして寒い外の雪を眺めながら、温かいお茶をすすり、また考えを整理し…、冷えたらまた温泉に。仕事の疲れを丁寧にひとつずつ剥がし、手離していく作業のように、過ごしたのでした。


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酸ヶ湯温泉のコミュニティスペースでお茶と読書

読書に飽きたら館内を歩いてみます。壁に貼られた資料を読むと、版画家である棟方志功氏もこの酸ヶ湯を愛し、湯治をしながら作品づくりに励んだそうです。また、酸ヶ湯の古き良き伝統文化の「混浴」を守る目的で平成17年に発足した「混浴を守る会」の永久名誉顧問である三浦敬三氏も八甲田の山をこよなく愛された方で、登山家の三浦雄一郎氏はご子息にあたり、様々な方にも愛される湯であることを知りました。そしてまた湯に浸かると、この湯に棟方志功氏も三浦敬三氏も入っていたのだなと、時空を超えてリンクしていけるのでした。

2泊3日すると、初日と最終日が移動を伴うのですが、中日は移動がなくなります。心身をリセットするにはこの中日がとても重要だと私は思っており、このノマド旅でも初日から3日間はひとつの場所に留まる、と決めていました。中日、移動がなく朝から晩までここで過ごすことは、まるで「生活」になってくれます。日常とは全く違う場所でありながら、日常に似た一日をゆったりと過ごせる中日は、心身の開放と直結する気がしています。

●酸ヶ湯温泉
〒030-0197 青森県青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50番地

3日目 青森 不老ふ死温泉で1泊


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不老ふ死温泉 (引用:不老ふ死温泉Facebookより)

ノマド式ひとり湯治旅3日目、酸ヶ湯温泉で2泊した翌日の朝、酸ヶ湯温泉の送迎バスで青森駅へと戻りました。2日間同じ場所で留まったおかげか、体力的にも心理的にも劇的に回復を遂げている気がしました。そしてそこから新青森駅へと移動します。その新青森駅からまたまたお宿の送迎バスが冬の間出ているのが、青森県の日本海側にある不老ふ死温泉です。新青森駅から不老ふ死温泉まで、送迎バスでおよそ3時間弱。とても広大な青森県中央部からぐいっと日本海側まで、しかもひゅ~るりらら~な雪景色の中、ゆくのですから、それは長旅となります。

黄金に輝く夕日を眺めながら入ることのできる絶景温泉として有名なここは、世界遺産に登録されている白神山地の麓にある国定公園の中にあります。冬の日本海の荒々しさと淋しさの中、海の音と鳥の鳴く声しか聴こえないここは元来湯治宿ではなく旅館・ホテルなのですが、含鉄・ナトリウム・マグネシウム・塩化物強塩泉という泉質を持ち、温めて保湿をしてくれる女性の身体に優しい湯と言えます。そして圧倒的な日本海、圧倒的な夕日を眺めながら静かに入る温泉は、すべての邪念をどっかんどっかん洗い流してくれそうでした。日が昇って暮れるまで、この海に面した露天風呂に心行くまで入ることができますよ。とにかく遠い不老ふ死温泉、その名も手伝って、ここにちゃんと辿り着けば不老不死になれるかもしれません。

ひょうたん型の露天風呂は、男女混浴になっていますがバスタオル着用が可能です。塀を隔てて隣には女性専用の露天風呂もありますがひょうたん型ではないのです。いずれも湯は同じではありますが、ひょうたん型になぜだか入りたくなり、時間を見計らって「独泉」しちゃいました!


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不老ふ死温泉のひょうたん型の温泉は混浴風呂 (引用:不老ふ死温泉Facebookより)

●不老ふ死温泉
〒038-2327青森県深浦町舮作字下清滝15

4日目 岩手 鉛温泉藤三旅館で1泊


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鉛温泉藤三旅館

ノマド式ひとり湯治旅4日目、不老ふ死温泉からの送迎バスに朝9時に乗り込み、新青森駅に着いたのは12時前。不老ふ死温泉は移動と夕日を見ながら入る温泉、これのみを往復6時間かけて堪能した。遠かったよね…、こんな無謀な旅、嫌いじゃないな…、なんで私は移動が好きなのだろうか…などと、移りゆく景色の中で考えを巡らせるのもまたこの旅には良いものでした。そして新青森駅に到着、ここから岩手県へ南下していきます。

新青森駅から新幹線で盛岡、盛岡で乗り換えて新花巻に到着したのはさらに1時間40分後のこと、さらに新花巻で少し待機した後、「花巻南温泉峡無料シャトルバス」に乗り込み、1時間後、鉛温泉藤三旅館に到着しました。この日は少し移動に長く時間をかけすぎました。

岩手県花巻市の奥羽山脈の中腹に位置する、花巻南温泉峡「鉛温泉」唯一の一軒宿である藤三旅館は、これまた雪深くしんとした環境の中にある、1786年に開業した歴史ある湯治宿です。藤三旅館といえば、「白猿の湯」が有名なのですが、天然の岩をくりぬいてつくられた湯船の底から、生まれたての温泉がぷくぷくと湧き出している足元湧出温泉で、その深さはおよそ1.25メートル!立って入る珍しい「立ち湯」なのです。ここは混浴なのですが、なんとなくこの日は宿泊客の暗黙のルールで、先に入っている方がいらっしゃる場合にはまた後にしようと、そっとしておいてもらえる環境がありました。また、女性専用の時間帯も設定されています。

生まれたての湯に浸かるという贅沢は、大地の恵みと直結することができるということです。その大地のパワーを湯を通じて身体に取り入れることができ、温かい湯に抱きしめられているようで、立っているのに浮いているような不思議な感覚になりそうでした。移動で少し疲れた身体も、この浮遊力ですぐに回復することができましたよ。さすが温泉だな。


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立位浴で入浴する白猿の湯 引用:藤三旅館公式ウェブページより

藤三旅館はとても面白い旅館で、昔ながらの湯治部、いまどきの旅館部、ハイクラスの別邸と3つのクラスに分けた経営をされています。別邸専用の客室風呂を除いて、白猿の湯をはじめ館内にある3つの温泉は、どのクラスに宿泊していても入ることができます。人類みな裸になれば平等、江戸時代の銭湯で武士も平民も同じ湯船に浸かり、刀を置いて裸の付き合いがあった…そんなことを思い出させてくれるような温泉宿でした。

湯治部はインスタグラムに力を入れておられ、そこに登場するのが湯治部売店のおばあちゃん。

このおばあちゃんこそが、鉛温泉藤三旅館代表のお母さまでいらっしゃり、鉛温泉の歴史を最も長く知る方なのです。優しい物腰と素敵な笑顔にやられます。売店でおばあちゃんと長くお話しをするのが、実は最も面白いこのお宿の過ごし方なのかもしれません。

壮大な自然と素朴で温かなひとたち、胃を温めてくれるおいしい料理と抱きしめてくれる温泉。真冬に来た東北は想像以上に心温かく、疲れた心も身体もどんどんほぐれていくのを感じました。旅は後半へと続きます。

●鉛温泉藤三旅館
〒025-0252 岩手県花巻市鉛字中平75-1

>>>湯治女子シヅカの「1weekノマド式ひとり湯治旅」~東北編~<宮城編>へリンク

ライター情報

湯治女子 シヅカ

湯治女子 シヅカ

広告代理店を経て、地域創生コンサル会社に勤務。大好きなビールよりも、一人旅と温泉と湯治場を愛する。アラフォーに片足を突っ込んだころに幸せを見つけた元癒し欠乏症患者。保有資格は、温泉入浴指導員、温泉ソムリエ、温泉観光実践士。

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修行したいって思ったこと、ないでしょうか。


人生の節目で迷っているとき。
だらしない自分に活をいれたいとき。
ベスト・キッドを15年ぶりに観たとき。


余談ですが、筆者は大学生の時に、お坊さんの資格をとるために本山で修行しました。
髪を0.5ミリに切りそろえて朝4時から井戸水かぶったり、何時間も正座したり。
上京まもなく「東京たのしーーーッす」とアタマ花畑状態だった私には拷問同然でしたが、終わった後は顔つきが穏やかになったと評判でしたし(2か月くらい)、就活でエントリーシートのいいネタになりました。

なお、浄土系は修行がかなりライトなこともあり、坊主トークの際に
「浄土って修行期間どれくらい?あ、2週間くらい。へえェー。うち1年。」
みたいな謎のマウンティングを仕掛けてくる禅宗系の人が稀にいるので気を付けましょう。

 

実は、一般の方でも心身の鍛錬のために修行ができるところがあるのです。

そんなわけで今回は、気を引き締めていくべき修行が体験できる宿坊/お寺をランキング形式で紹介いたします!
*完全に筆者の主観です。

2017.06.29